りんご栽培と農薬(野菜ソムリエ)

2013/7/25

あおもり野菜ソムリエの会・ファーマーズクラブ勉強会

─ もっと知ろう! リンゴの農薬使用 ─

参加報告

日時/2013年7月22日(月) 13:00〜15:30

場所/独立行政法人青森県産業技術センターりんご研究所

http://www.aomori-itc.or.jp/index.php?id=1141

講師/上記研究所 病虫部

http://www.aomori-itc.or.jp/index.php?id=1159

 

 

映画『奇跡のりんご』のヒットで、青森のりんご生産者のみなさんは、無農薬栽培に関しての質問をされる機会が増えたのではないでしょうか。

 

農薬は、一般消費者にとって、健康に害を及ぼすもの、使わないほうがいいものというイメージがあると思います。

しかし、農薬とはどんなものをさし、どういう目的で、どのように使われ、どれほど作物に残留し、市場流通している作物から害を受けるのかと問われて、根拠のある解答ができる人がどれだけいるでしょう。

さらに、りんごに関して言えば、「無農薬」、「葉とらず」、「無袋」などの言葉が一人歩きして、ある意味ブランド化しているようにも感じています。

 

青森は「日本一健康な土づくり」に県をあげて取り組んでいます。健康な土づくりは、農薬や肥料の過剰な使用を抑えるための基本であり、消費者の望む安全・安心な作物づくりへの積極的な姿勢の表れです。

とはいえ、青森県のそうした取り組みや、特産品であるりんごが、いま、どのように栽培されているのかを知っている消費者の方は多くはないでしょう。

恥ずかしながら、県内に住んでいる私自身も、農薬のことはもちろん、現在行われているりんご栽培の基本的な作業工程や、無農薬栽培の定義などをきちんと知りません。

そこで、今回、あおもり野菜ソムリエの会・ファーマーズクラブ企画のりんご勉強会に参加させていただきました。

 

今回、伺ったのは、黒石市にある独立行政法人青森県産業技術センターりんご研究所(以下、りんご研究所)。りんご研究所は、主な取り組みとして「環境に調和した病害虫制御技術の開発」、「消費者の安全・安心志向に配慮した効率的病害虫制御技術の開発」を掲げています。

 

りんご研究所の圃場では、さまざまなアプローチの研究が併行していくつも進められていました。

台木の品種改良、詰めと流しという剪定法の比較、台木の長さによるわい化への適性の比較、トレリスなどの資材を使った枝の誘導…などなど。

たとえば、土の流芒を防ぎ、緑肥としてすき込むこともできるクローバーなどの種を蒔いて下草を生やした「草生(そうせい)栽培」や、りんごの剪定枝をチップにして地面に敷いて雑草を防ぐ「マルチ栽培」は、健康な土づくりのコンセプトに合致しています。

 

青森県内には、慣行栽培、特別栽培、有機栽培、無農薬栽培と、それぞれのスタイルでりんごを育てている生産者の方がいらっしゃいます。

 

①慣行栽培は、化学合成農薬や化学肥料を使用した従来の栽培法。

②特別栽培は、化学合成農薬や化学肥料を使用しない、あるいは慣行栽培よりも使用量を半分ほどに減らす栽培法。

③有機栽培は、規定の年数以上、化学合成農薬や化学肥料を使用してない圃場で、それを使用しない栽培法。

④無農薬栽培は、農薬を使用しない栽培法。

 

栽培した作物に、「特別栽培」、「有機栽培」などの表示をする場合は、規定の栽培条件をクリアして、認証や認可を受けなければなりません。

ただ、無農薬栽培には、現状、認証や認可の制度がないため、規定も特にないそうです。

さて、ここに、化学合成農薬と、農薬を、あえて書き分けたのには理由があり、のちほど説明します。

 

農薬には、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、殺鼠剤、植物成長調整剤、忌避剤があります。また、特定の生物、誘引剤、展着剤(詳細は下記リンク参照)も、農薬に含まれます。

慣行栽培では、それぞれの作物ごとに、目的に応じて使える化学合成農薬の種類や量、使用するタイミングが厳しく詳細に定められているそうです。

害虫や害獣、病気を寄せ付けず、土の栄養バランスが保たれ、味のよいりんごが順調に生長し、安定した収量があげられるよう、なおかつ、収穫のタイミングで果実への残留農薬が規定の基準値を下回るように、散布のスケジュールが組まれているのだとか。

トレーサビリティで見ると、農薬散布の回数が多くて驚きますが、それぞれの農薬の使用目的が違い、効果的に働き、必要な対象以外にできる限り害を及ぼさないように使用時期も調整した結果が現状のようです。

また、残留農薬の基準値は、収穫された果実を食べても人体に影響がない量より、さらに低めに設定されているのだそうです。

 

ところで、有機栽培では、農薬が使えることをごぞんじでしたか。

 

実は、「農薬」の範疇は広く、重曹や食酢、害虫の天敵となるてんとう虫などの生物も農薬に含まれます。

有機栽培は、化学的に合成された農薬は使用しませんが、有機物などでできた一部の農薬の使用は認められているのです。だから、有機栽培イコール無農薬栽培ではありません。その点を誤解している人が多いのではないかと思います。

また、りんご栽培では、害虫や病原菌から守るために、果実に袋をかけて覆う期間があります。この袋は「防菌袋」といって、防菌処理が施されているそうです。つまり、農薬の散布はしなくても、袋をかけて栽培すると、基本的には農薬を使っていることになります。

 

つまり、農薬と聞いて、私たち消費者が真っ先に思い浮かべる化学薬剤だけが、農薬ではないということです。食品や自然由来であっても、農薬と括られるものが多数あります。そういうものを一切使用しない栽培法でなければ、無農薬栽培とは言えないわけです。

 

りんご研究所の手入れの行き届いた他の圃場から、少し隔離されたような場所に、「無農薬栽培」の圃場がありました。
すでに40年ほどの研究の歴史があるそうですが、この圃場のりんごの樹は寿命が短いため、途中で何度か植え替えられたものばかりとのことでした。いずれも幹が細いのは、そのためのようです。
ほとんどの樹の幹や葉が病害虫に侵され、健康に見える樹は見当たりませんでした。生長中の果実にも虫食いや斑点があって、きれいなものはありません。中に一本、幹全体に薬品で病気の手当を施された樹がありましたが、この樹はこの段階でもう無農薬とは言えなくなるのだと思いました。
りんごは、果樹の中でも特に、無農薬栽培がむずかしいそうです。

 

短期間で生長して収穫できる米や野菜を無農薬で育てるのも大変ですが、実際に圃場を見学してみて、生長に時間のかかる果樹の場合、畑の管理や維持はさらに困難を極め、リスクが高いことを実感しました。

一切の薬を使わないということは、病気になった樹は収穫を諦めなければならないし、病害虫の被害が広がっても為す術がないということです。

 

今回の勉強会では、かなり大きな括りで、「農薬」についてお話をうかがいました。

化学合成農薬は、それぞれが認定までに長い時間をかけて実験検証され、安全性が認められてから使用が許可されており、なおかつ、安全な使用法が遵守されているという前提で聞いています。

また、有機栽培で使用が認められている農薬や、食物や自然由来の農薬については、詳しくうかがっていません。

肥料に関しても、青森県の方針である健康な土づくりがベースにあると考え、肥料の種類や使用についてはうかがっていません。

まだまだ、わからないこと、知りたいことばかりです。

 

ただ、今回、りんご研究所の取り組みを拝見して、これまで続けられてきた、生産者のリスクをできる限り回避し、品質を向上し、安定生産・安定供給を可能にする研究の延長線上で、消費者の望む安全と安心についても折り合いがつけられる栽培法が模索されていることがわかりました。
また、自然環境に負荷の少ない栽培法に移行する流れであることも、改めて感じました。

 

実際、認証や認可は受けていなくても、化学合成農薬の減農薬や低農薬に取り組んでいる生産者の方が私の周囲にも増えています。

また、自然由来の農薬や肥料を使って、さまざまな試みをし、成果を出そうと努力している生産者の方もたくさん知っています。

 

今回の参加者の中に、家庭菜園で化学合成農薬を使わずに、野菜を育てている方がいました。その方によると、ご自身の畑ではずっと使用していないけれど、収穫した野菜からは微量の化学合成農薬が検出されるのだといいます。周囲の畑が使用しているので、その影響ではないかとおっしゃっていました。

 

同じ地域に育つ作物は、空気も、水も、土も共有しているので、互いに影響を受け合うのは当然なのかもしれません。でも、だからこそ、逆の場合もあるのだと思いました。

りんご研究所の無農薬栽培の圃場のりんごの樹の病害虫の被害は、近くの別の圃場にまでは広がっていなかったからです。

 

以上が、今回の勉強会で見聞きしたことへの一消費者としての立場での感想です。世間に流布している情報の曖昧さと、自分の無知を痛感しました。下記のサイトの情報も参考にしてまとめましたが、知識不足から、間違った解釈をしている部分があるかもしれませんので、先にお詫びしておきます。

 

身近でありながら、なかなか知る機会がないテーマでした。今回の企画を実施してくださったファーマーズクラブ部長に感謝しています。

これを機に、農薬を含めたりんご生産の現状に関して、今後、さまざまな立場の方からさらにお話をうかがっていきたいと思いました。

 

 

農薬とは

http://www.applenet.jp/~syoku-anzen/nouyaku/01_nouyaku_toha.html

農薬取締法

http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_kaisei/zenbun.html

有機JAS規格

http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki.html

特別栽培農産物

http://www.pref.aomori.lg.jp/sangyo/agri/tokusai.html

http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/tokusai_a.html

健康な土づくり

http://www.pref.aomori.lg.jp/sangyo/agri/2008-0710_tutidukuri_top.html

有袋と無袋

http://www.ringodaigaku.com/main/bag/bag.html

農薬の適性使用

http://www.applenet.jp/~syoku-anzen/nouyaku/01_nouyaku_toha.html

エコな取り組みをしている生産者情報

http://www.applenet.jp/~syoku-anzen/kankyounougyou/

 

あおもり野菜ソムリエの会の公式ブログに、勉強会当日の写真と、りんご生産者であるファーマーズクラブ部長の記事がアップされる予定ですので、そちらもぜひご覧ください。

http://ameblo.jp/aomori-yasaisomurie/

 

 

 

 

 

 

 

 

»その他の「CLUB ACTIVITIES」記事一覧

コメントを残す